ずっと嫌いだった。 飄々とした態度、10代目へのあの馴れ馴れしい態度。 すべてが俺にとって不快だった。 それなのに………たった一度の俺のした気まぐれで、今までの関係が一転してしまった。 あんな事するつもりは無かったのに……
「10代目!!お待たせしました!」
いつもなら教師に呼び出されても無視するのだが、10代目に『ちゃんと行って来た方が良いよ』と言われてしまったら、それに従わずにはいられなく、必然的に10代目をお待たせする事となったのだ。 教室の扉を勢いよく開けたは良いが、そこに10代目の姿は無く、代わりに山本がそこに居た。
「何でお前がいるんだよ…」 「ツナに伝言頼まれたからな。それにしても……獄寺、いつも眉間に皺よってるのな」
山本は、俺に近づくと眉間に手を伸ばし、皺を伸ばそうとする。 その手を、勢いよく払った。 一瞬山本は驚いた表情を浮かべたが、また飄々とした顔に戻る。 こいつを見てるとイライラする。
「早く言えよ!」 「ん?何をだ?」 「10代目からの伝言!!頼まれたんだろ!」 「あぁ。先に帰ってるって伝えろって言われたんだよ」
予想していた答えに一つ溜息をつくと、早々にこの教室を出て10代目を追いかける事を決め、鞄を手に取り帰ろうとした。 山本は、帰ろうとする俺の手を取りいつもの笑顔で言った。
「せっかくだし、一緒に帰ろうぜ。なっ?」 「何で、お前と帰んなきゃ行けねぇんだ!離しやがれ!!」 「まぁ、まぁ…すぐ着替えてくるから、校門の前でな!」
山本は、俺の返事も聞かず教室を出て行った。
「ちっ……なんなんだ、あいつは……」
校内だということは知っていたが、俺は持っていたタバコに火をつけそれを咥えた。 吸わずには要られないだろう。 約束をしたわけではない。しかし、その申し出を否定できなかった。 守る必要がないと分かってはいるが、そのまま無視する事もできず、俺は山本が来るのを待っている。 腹が立つ。あんなやつの良いなりになっている様で腹が立つ。 何か、報復できることがないだろうかと必死に考えていると、いつのまにか山本が校舎から出て来ていた。
「本当に待っててくれたんだな」 「お前が、言ったんだろ!!ふざけんな!」
あまりの物言いに、俺はダイナマイトを取り出そうとしたが、10代目に止められていた事を思い出し、舌打ちだけですませた。
「悪かったって。本当に待ってて貰えるなんて、思ってなかったからさ。ありがとな、獄寺」 「ふんっ…」
山本の何の衒いもないその言葉に、今までイラついていた気持ちが沈下していくのを感じた。 俺は自分の気持ちが分からなくて、山本へと目を向けた。 その時見た山本が……夕日に消えていってしまうように感じて……
「ごっ、獄寺?!」 「っ!!」
俺は、山本の制止の声を無視してその場を走り出した。 分からない、分からない…… どうして、あんなことしてしまったのだろう。 山本へと手を伸ばし、在ろう事か……唇を奪ってしまうだなんて… 俺の中は、自分でしでかしてしまった事への困惑と、意味の分からない動機でいっぱいだった。
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