掴みたいと思った。 その腕を、その身体を。 すべて、自分の物にしたいと思った。
「おい……いい加減にこの体制やめろ」
二人っきりの部屋で、俺は獄寺を後ろ抱きにする形で座りながらテレビを見ていた。 空調が効いた部屋での獄寺の体温は心地よい。
「なんで?」
「なんでって……」
「恥ずかしい?」
「ばっ、そんなわけあるか!」
そう言った獄寺はしまった!という顔をしたが、今更自分の言葉を撤回する事もできず、プイッと横を向いてしまう。 実際すごく恥ずかしく思っているのだろうと言う事は、獄寺の表情や、触れている身体から感じてはいたが、この心地よい感覚を手放すのが嫌で無視する。
「だったら、良いよな〜」
抱きしめていた腕に力を込める。 たまに、獄寺が遠くへ行ってしまう様な感覚を覚える事がある。 それは、いつもやっている「マフィアごっこ」に奇縁する。 初めこそ、ただの遊びだと思っていた。 しかし、いつ頃からかそれが「ごっこ遊び」ではなく、実際の「マフィア」なのだという事に気がついた。 それを認めてしまうのは、今の自分の価値観、環境全てを投げ捨てなければいけない事で…… いずれ考えなくてはいけない事だと言うことはわかっているが、まだ今はこのままでいたい。
きっと俺は、家族や野球ではなく獄寺の手を取ってしまうだろうから。 そうすれば、獄寺は今の様に無邪気な表情を見せなくなるだろう。 『自分がマフィアにさせてしまった』そんな自責の念に囚われて。 獄寺の想いが変化しても、俺はきっと手放せない。
「獄寺…好きだ」
「知ってる」
決して「好き」とは言ってくれないけれど、今この環境が全て愛おしい。 もう少しこのまま、選択の迫られない時間を過ごしたい。
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